2011年11月16日水曜日

カウンセリングの実際-8 事例を通してアセスメントを学ぶ

5 米良哲美(ルーテル学院大学専任講師) 251教室

前回はPGCと臨床心理センターの見学をしましたね。
どなたか感想を言っていただけますか?

緑がどの部屋にも置いてあって、窓からの景色も-
家的な感じで居心地がよかった(もともとお家ですから)
逆に言うと待合室が取れないなど、ちょっと狭いんですよね。
それが元民家だったことのデメリットですね。
だいたいイメージを掴んでいただけたでしょうか


事前に練習事例をお渡ししますので、その条件で
どのようなことをアセスメントで聞くのか考えていただきます。
その人の抱えている問題をきちっと描き出していくのは
アセスメントの最初のカウンセラーの役割です。

ただ傾聴して共感しているだけでは問題が見えてきません。
状況設定が出来上がってはじめて傾聴と共感です。
最初の段階からそれでは役割は果たせません。

今日の内容

1. 事前にクライエントの性別、年齢、主訴はわかっているものとする
→アセスメントとしてどのようなことを聞いていくかを考える

2. アセスメントを進めながら、必要な情報を集め、
焦点になりそうなところを詳しく効くようにする。
→主訴がどのように形成されたのか
(素因か、環境因か、環境因だとすればどのような要素からか、など)
ストーリー(仮説)を描いてみる。更に必要な情報は何か。
それはどのような方法によって得られるか検討する。
もし心理検査によって得られるなら実施の検討

3. 仮説をもとにその解決の方法について検討する。複数案が望ましい

4. 以上が準備できたらそれをクライエントに話す(フィードバック)

今からプリントの練習事例を読んで検討をします。

まず、簡単な設定状況を読んで、何を聞くのかを検討して下さい。
可能性がありそうなことを想像する。可能性は幅広い方が良い。

続いて、面接記録を読んでの検討です。

【練習事例】

クライエントは女性、28歳、離婚歴があり現在は単身生活。
主訴は時折の失神発作で、ほかに失声などの症状
心療内科医からカウンセリング希望として紹介された

(じゃあこれを読んで個人で5分ほど考えてみてください。)


○自分が考えてみたこと
・いつから症状があるのか。(離婚前後に関しては詳しく)
・どのような時に症状があらわれるのか(不安が身体症状化しているのではないか?)
・どういう症状なのか
・症状について自分で思い返してどう思うか。なぜ症状が出ると思うか(自覚の程度を確かめる)
・現在の症状は生活にどのような問題をおこしているか(事例性をたしかめる)

・現在の生活の中で何か不安はありますか(症状から引き離して質問をしてみる)

・家族に同様の症状を持つ人はいるか(遺伝性の疾患の可能性はないか?)
・他の病院にはかかっているのか・なにか薬は飲んでいるか

(上のを発言してみた)
いまのは中心的な課題について、ですね、
これを周辺に広げてみてどうですか?

(学生)
・現在仕事をしているか、交通手段、
・子供がいるのかどうか。

(学生)
・単身で暮らしているという事で、親御さん、家族との関係
・近所に頼れる人がいるのかどうか。

(学生)
・どうして離婚をしたのか

ライフイベントの中で離婚は大きな事ですよね。

そうですね、だいたい、ほぼ出揃ったかなという感じですよね。
症状そのものがどういう出方をしてきたのか、は大事ですし、
症状が環境的なものなら、家族関係、職場の関係はどうか、強いて言うなら友達関係、
また、趣味のことだとか。
そういうことが原因で発作が起こりえるのではないか、と。

はい、結構だと思います。
先へ行きましょう。

【面接記録】<>内は状況の説明、()内はカウンセラーの発言

<挨拶と自己紹介、面接の目的の説明など>

(今日の調子はどうですか?)

軽い頭痛があります。

(話は続けられますか?)

はい、大丈夫です。

(それではどのようなことで相談にみえたのか話してください)

最近、時おり意識がなくなることがありました。
以前から声が出なくなることがありました。
近くのクリニックで見てもらい、
脳波の検査などをしましたが問題ないということです。
それで先生が心因からではないか、ということで
カウンセリングで相談してみるように勧めました。

(意識がなくなることについて話してください)

一番最近では昨日、バス停でバスを待っている時、
何となく気持ちが悪くなってしゃがんでしまいました。
通りがかりの人が救急車を呼んでくれて病院にいきました。
救急車に乗るところまでは何となくおぼえていますが、
気がついたら病院のベッドでした。
病院では検査をして特に問題なく、意識もはっきりしてきたので帰りました。
気を失ったことに特に思い当たることはありません。

(今度は声がでないことについてお話ください)

○月○日(約1週間前)声がでなくなりました。
以前にもちょっとした衝撃で声が出なくなったことがあります。

(それはいつ頃のことですか?)

幼稚園から245歳までずっとです。

(どのような状態になりますか?)

のどが詰まった感じがする。
息が出来なくなる。
息が吐けなくなるなどです。
小学校の高学年ではよく過呼吸で倒れました。
吹奏楽で治るかと思ってクラリネットを吹いていました。
中学生の時に自律神経失調ということで母親とA大学のカウンセラーと会っていました。
日常あったことの話をしたり、気持ちを落ち着かせる体操をしました。

(その時のカウンセリングの感想は?)

ちゃんと耳を貸してくれる大人がいると思いました

(カウンセリングでの主なテーマは?)

母と祖母の関係が悪かったこと、学校で何があったかなどです。

(自分の症状について思うことを教えてください。)

結婚、離婚などでずっと不眠と不安がありました。
それに人間関係のトラブルや、仕事を変わったこと、
近所の事件が重なって一気に症状が出たと思います。

(小中学校の頃の過呼吸や自律神経失調と関係はあると思いますか?)
根本は繋がっていると思います。
小中では母と祖母との関係で板ばさみとなり、今でもそうです。
どうしてよいか分かりません。 
結婚・離婚にも二人の意見が関わっています


では、これを読んで10
・どういうストーリーが描けるか、
・さらに不足と思われる情報は何か、
考えてみてください。


・幼少のころから家族内で母と祖母の不和があったことから、
家庭の中で安心を感じられる状況になかった。愛着の不足もあるかもしれない。
自分の不安に直面することが出来ず、小さいころから身体症状として
不安に対処するという適応方法をとってきた。このことは一種の防衛と考えられる。
失神にたいする自覚的な原因は無いというのは、
それを避けてきたからと考えられるが
そのことを見るのには苦しさや恐怖をともなうこともあったのかもしれない。

しかし、そのように対処してきてしまったため、
家族に対して言いたいことを内に押さえ込んでしまっている可能性がある。
自分の憤りや悲しさなどの否定的な感情に触れることに対しても
無意識での恐れがあるかもしれない。

自分が感じたくない不安が頭にあらわれそうになると
その感情を身体ごと押さえ込むというような表れとして
身体を緊張させ、無意識的に失神という方法を選ぶのか

母や祖母との関係において、自分が言いたいことを言った
または感情をぶちまけた、というような経験があったとしたら
そのことをきっかけに現在の状況を変化させるきっかけを見出せるかもしれない。

そのことを話す中で、カウンセラーがクライエントの
感情の転移を受け止めることで、
クライエントが今、ここで起こっている感情から
過去の不安や葛藤に目を向けるきっかけになるだろう。

身体の緊張、こわばりに対しては、
中学の時に「気持ちを落ち着かせる体操」をカウンセラーから習った
とのことだが、効果が無かったのだろうか?また現在それをすることはあるのか?

現在の本人は大人であり、葛藤を抱えられるようならば、
カウンセラーとともに不安を見ていく
また、母や祖母に言いたいこと、
否定的感情も含めて彼らにどのような感情を抱いているのかを話してみる
という介入方法をとれるのではないか。


【更に聞くこと】
・母親との関係
・きょうだいはいるのか
・「気持ちを落ち着かせる体操」について
・中学生以降カウンセリングには?


(学生)

父親の存在が出てこない、
そのことが男性に対する不信感、
また結婚関係の継続困難へとあらわれているのではないか。

そのことを聞くのにどういう質問をすれば良いと思いますか

(学生)
男性にたいしてどういうイメージがありますか
どんな気持ちでデートに行きますか?

この質問は、いままでのクラスでは出てこなかったものですね。

どういう感じ方、どういう振る舞いをするのか
パーソナリティ像を聞く必要がる。

そして聞くだけではなくて、
質問としては「自分で自分をどう思う?」という漠然としたもので良いと思うが
自己像に関して聞く。

しかし人は自分だけで出来るものではないので
「家族の性格はどうですか?」
「お父さんはどんな人ですか?」という質問をすると
家庭の中での位置が見えてくるだろうと思います。

あとは「お母さんはどんな人ですか?おばあちゃんは?」と聞くと
それぞれの性格が、どういうことが諍いの内実で、
クライエントがどういう気持ちで、それを見ていたかがよく分かると思います。
またきょうだいかんけい、家庭の中でのとりうる位置が見えると思います。

あと、弟さんがいらっしゃるのですが、
彼がどんな位置にあって、家族とどんな付き合い方をしているのかがわかると
家庭の中の子どもの取りうる位置が見えるんじゃないでしょうか。

・情報は多ければ多いほど良いが、「制限時間」と「筋」を見て

こんな風に探って、構成していくわけです。

あとでDVDを見ていただきます。
CBTに基づくアセスメントです。
自分をどのように認知しているかというのが特徴なのですが、
だいたいどんな風にやるかお分かりいただけると思います。
2時間ビデオの内のアセスメントの様子の30分を。

来週は祝日で休みなので
再来週は二人ペアでインテークの練習をしていただきます。各10分程度で。

何を聞くかということをね、
今日の体験を応用してその人に質問をしていってください。
カウンセラー役とクライエント役を交代して。
カウンセラー役の方は今のようなことを念頭において質問をしていく。

で、クライエント役ですね。
最初の時に、役作りが難しいという意見が合ったが、
ちょっと10分ほどあるので、
自分がどんな役をやろうかというプランを練ってみてください。

で、まるまる自分のことは話さないでいただきたい。
他人を想定してください。


(宿題)

まず、どういう問題を持っている人かを考えて。
それから、その問題がどうして起きたのか。こうなると幅広いですね。
今のケースなら家庭内の葛藤から症状が出てきたらしいと。
で、かかっている時間も長いし、性格形成に環境がとても影響してきたと
自然と形づくったという事ですよね。

そういう風に、自分が想定する人がどんな環境でどんな体験をして
どのように、成長してきたのか、ということを考えてください。
それから家族関係を考えてみてください。どうやって成長してきたのか。 
どこかでうまくいかなさ、を感じることになる。
そこから悩み、葛藤が生じて、症状になったり、悩みとしてはっきりしてきたり
そのへんの想定をしてみてください

 
*小説の登場人物を考えるみたいだ。

【DVD】
CBTにつなげていくようなアセスメントになっているという特徴をふまえて見てください。

<DVDで学ぶ新しい認知行動療法>うつ病の復職支援
1 認知行動療法によるうつ病患者のの復職支援の実際
<監修・解説>神村栄一(新潟大学教育学部 准教授)
星屑倶楽部/中島映像教材出版 (2011年)


○うつ病における認知行動療法

・解説は新潟大学の神村先生です
 早速ですがうつ病の治療にCBTが用いられるのはどうしてですか?

第一に、クライエントの改善回復を、確率高く達成できる手法である。
エビデンスがある

・クライエントや家族や支援者にとって、CBTはどのように捉えられているのでしょうか?

CBTは、家族にも本人にも理解しやすく実践しやすい内容からできています。
比較的短期間の内に効果が得られやすいとも言われている
それはクライエントの性格を深く分析する、とかではなく
日々の生活に丁寧に目を向けていく、ということから出来ているため。

CBTはうつのひとに受けやすいカウンセリングなんですね?

やさしくて分かりやすいといわれています。
もうひとつ大切なのは、カウンセリングが終わって、
回復したうつが再発するという事はしばしばある。
CBTの場合は、再発しにくいということも確認されています。

CBTには予防の効果もあるんですね

クライエントにとって生涯に渡ってうつになりにくくなる
生活のこつ、を残してくれるカウンセリング
そういう意味では薬の治療もそれはそれで大事だが、
薬よりも、後に残す良い効果という点で優れている。

・では、今回のクライエントについてご紹介します。
食品会社のコンプライアンス部に勤務するカンザキさん、33歳。
共働きの30歳の奥さんと二人暮らし。
2年ほど前に現在の部署に異動したが、なれない仕事から行き詰まり、うつ状態
半年前に休職し、このたびカウンセリングルームを訪れた。

・カウンセリングルームではどのような治療がおこなわれるのでしょうか?

それはほかのカウンセリングと変わらないのですが
・どんなことに困ってやってきて、
・どのような生活にしたいか
をゆっくりと暖かい雰囲気の中でうかがいます。

時々、CBTを誤解した方が、いきなり教え込んだり、命令したりとかあるが
それはCBTではない。

・クライエントの幼少期の話は聞く?

どちらかというと現在の生活の様子を具体的にうかがうのが中心になります。
ただ、小さいころのことや、過去のことも関連する部分は必要に応じて聞くことはある。

クライエントは一般に、
「苦労があって、こんな風に大変だったんです」ということを
ちょっとは聞いて欲しいという部分があるので。
それは聞いて差し上げて、これまでの苦労をはねぎらいながら聞いていく

・カウンセラーがCBTを行うに当たってのコツやポイントはありますか?

クライエントの生活の中での問題や、症状に関係する部分が、
ある状況で一定の展開をする、その展開を詳しく、
聞いてるこっちが手に取るように、
頭の中に映像で浮かべられるくらいに聞いていくことが大事。
「こういうことなんですね」というように時折確認もしつつ。
理解がずれないように

・先生はカウンセラーとクライエントはどのような関係であるべきとお考えでしょうか?

よくカウンセラーは、クライエントのいう事をさまたげたりせず、
「うんうん、なるほど」と聞くことが大事と言われますが、
もちろんそれは基本なのですが、
クライエントの話を聞いていて、どうも分かりにくいなという時や、
映像としてうかべにくい時は
積極的に質問をしていく
「こういうところはどうですか?」
「今のところをもうちょっと詳しく教えてもらえますか」
というように積極的に聞いていけたら良いと思う。
それによって、クライエントも、カウンセラーは一生懸命聞いてくれているなと
信頼感、安心感がでてくると良いと思います。

・カウンセラーの養成においては、
クライエントのペースに合わせて、疑問を一切投げかけないように
と教わった方も多いかと思うのですが。

そういう誤解があるのは、
いい関係をシッカリ作ってからカウンセリングをはじめましょう、となってる場合で
いい関係をつくれるまで、なかなかカウンセリングの中心のところに
話がいかないということがある。

でも色々きいて確認して、教えてもらって、納得して、
というやり取りの中で関係を深めていくという風な、
カウンセリングの作業を進めながら良好な関係を作って行こう
という発想で進められたらいいですね。。

・今回のクライエントは初めてカウンセリングに来たわけですが、
初回のポイントはあるのでしょうか?

暖かい雰囲気のなかでで安心していただいて、
でもカウンセラー任せでカウンセリングが進むんじゃ無くて、
いろいろ自発的に話して、質問に答えてという事で進んでいく
ということに慣れてもらうことも大切ですね。

・その時のカウンセラーに必要な心がまえはありますか?

難しい話かもしれませんが、
心理学の考え方として、人っていうのは、うつ病だからこうなんだ、
人と言うのはこういう性格だからこうなる、
という理解の仕方ではない理解ができたら良いと思う。

というのは、人はけっこう、

・直前のある出来事を、こう見たから、こんな気持ちになった、とか
・ある気持ちになって、ある考え方を浮かべたから、これをしてしまった

というような、直前直後のことで気持ちが揺らぐ部分がある。
その、生活の中での気持ちのゆれで抑うつ症状ができる、
そこに悪循環が出来てしまっているということがある。
生活に密着した視点で抑うつの症状を理解できるようになると良いと思う。


○初回面接の実際

<ロールプレイ実演・指導>
小林奈穂美
(カウンセリングルームさくら・新潟認知行動療法リサーチセンター代表)

・ドアのノック。カチャ

カンザキさーん、どうぞ。
どうぞ、はじめまして。どうぞどうぞ。

よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。じゃ、そちらの方におかけください
カンザキさんはじめまして。小林と申します。
よろしくおねがいします。

カンザキと申します。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
カンザキさんちょっとその問診表を見せていただけますか。
はい、えーとカンザキさん今日は初回なのですが、
カンザキさんこちらに来てくださったのは、
ちょっと、抑うつ状態という事でいらっしゃったと聞いていますが
それでよろしかったでしょうか?

やる気が…起きない。
起きないと言うか、眠れないのと…
もう1年以上前からこんな感じなんですけど、
何とか、何とかしたいというのがありまして

はい。何とかしたい、はい。
1年位前から、ちょっと落ち込み、ということでしょうかね。

はい。
心療内科のほうには通っているんですけども。

通ってらっしゃる。はい。
じゃ、ちょっと順番にお聞きしてよろしいでしょうか
えっと、会社員という風になってらっしゃいますので
休職中という風になっていますが、
今、お仕事お休みしていらっしゃるんでしょうか?

はい。
あの、半年くらい前から、はい…休職しています。

半年くらい前から。
そうすると、今、5月ですから、だいたい冬くらいでしょうかね。

そのくらいですね。

そのくらいから。はい。
えっと、あと、ここの今書いていただいた症状の中で
いろいろ、落ち込みですとか、身体の不調、
人目が気になる、職場のストレス、朝早く目が覚める
っていろいろありますが
この中で一番カンザキさんが気になっている症状というのは
どれになりますか?複数でもいいですけど。

朝早く目が覚めてしまうとか
身体的に非常に、とても辛いので、それが一番、大きいです。

そうですか。
朝早く目が覚めるようになったのは、
やはり休職するときの、半年くらい前からですか?

いえ、あの、もう、1年以上前からずっと
職場で厄介な仕事を抱えておりまして、
それを…、機会がありまして、やることによって
きっかけで、頭が重くなったりとか、
朝もっと寝てたいのに早く起きてしまうようなことが続きまして

はい

はい

そうですか。そうすると朝早く目が覚めるというのは
何時くらいに目が覚めますか?

4

4

4時…、早い時で4時、3時半くらいですかね。

3時半くらい。
そうするともう全く眠れなくなって、朝まで-

いえ、寝ようとするんですけど、
寝ようとするんですけど、寝られないんです。

寝ようとするけど、眠れない。はい。
えーと、
カンザキさん先ほど心療内科さんにかかられているとおっしゃってましたが
心療内科さんのほうで睡眠薬等は出ていないでしょうかね?

睡眠薬…
えーと、マイスリーという睡眠導入剤になるんですかね
そちらのほうを処方していただいてます。

はい。そうすると、マイスリーを飲んでも
眠れはするけれども、途中で目が覚めて、朝まで眠れない。

はい

寝ようとしても寝付けないということですか?

そうです。

そうなんですね。
あと、パキシルとセパゾンも出ていますが、
このお薬を飲まれたのは、いつぐらいからですか?

それは、心療内科さんに通ってからになりますので
えー、1年前になりますでしょうか。

1年前くらいから。このお薬を飲むようになってから
すこし、症状の改善は、自分で感じられてますか?

改善、という改善になるんでしょうか…
あの、落ち着かない気持ちでいるということが非常に多かったんですけれども
何も考えないというか、考えなくても、悩み事を考えなくても、よくなる
という状態にはなりました。

んー、そうですか。
そうすると以前に比べると、少し落ち着いてこられているということですね。

そういうことになります。

<5分経過>

はい、分かりました。
えっと、そうしますと、カンザキさんのさきほど、待合室で書いていただいた、
これはBDIといいます。
で、カンザキさんのここ2週間の気分を測る、抑うつ度を測るものだったんですが
スコアがえっと、これを見ると27点という風になっています。
これは、抑うつ度が、だいたい中くらいという事で
あまり軽くもなく、そんなにひどく重くもない状態です。
ですので、少し認知療法をこちらの方で続けていかれて
えーっと、改善してくると、このうつの状態も、
眠れないとか、落ち込みとかも少し和らいでくるかなと思いますので
ちょっと、今日は、カンザキさんの、どんな風に落ち込んできたのかとか
今困っていらっしゃることを先にお聞きしたいと思いますが、よろしいでしょうか?

はい。

はい。じゃあ、えーとまずですね、
カンザキさんの今の、身体の症状は今聞かせていただいたので分かったのですが
カンザキさんが今一番困っていらっしゃることというのはどういうことでしょうか?

仕事にいけないのが、辛いです。

仕事にいけない。休職中ですもんね。

行こうと思えばきっと、行けるんですけど、

えぇえぇ

その、踏ん切りがつかないというか
その、朝起きたら、行かなければならない、
行けばいいのにと思っているのに、
いざ行こうとすると、行けない。
なぜ…、なぜかは分かっているんですけれども、行けない。

行けない。

こわ、怖いんでしょうね、怖くて行けない。

はい。
えっと、朝起きようとすると、と言うと
カンザキさんさきほど3時、4時に目が覚めてらっしゃるので
その間ずーっと会社に行きたいのに行けないという風に思いながら
布団の中にいらっしゃるんですか?

それが半分と、あとは、寝なければまた状態が悪化、悪化と言うか、
一日の中でその、気力をちゃんと保っていられなくなるから寝よう思うの半分
行きたくない、行きたい、それがはい、半分です。

行きたくない、行きたくないし、でも行かなければいけないという気持ちで
いっぱいになるんですね、はい。
カンザキさんは今、お一人でお住まいですか?

いえ、妻がおります。

あ、奥様。
えっとー、家族は今現在、カンザキさんと奥様の二人暮らしでしょうか?

はい。

はい。そうすると
ちょっと家族構成を教えていただきたいのですが、
カンザキさんが今会社員で、33歳ですよね
奥様はおいくつですか?

30歳になります。

30歳。お仕事をされている方でしょうか?

はい。働いております。

働いていらっしゃる。えっと、
どのようなお仕事か差支えがなければ教えてください。

えー、製造業の事務になるんですけれども

事務、はい。
えっと、フルタイムでしょうかね?

いえ、今は私がこんな状態ですので、
収入のこともあるんですけれども
努めて、そうですね、早く、帰ってきてもらっているようです。

んー、えっと
フルタイムだけれども時間調整をして帰ってきて下さっている。

はい。

<10分経過>

はい。はい。そうなんですね。はい。
そうすると今カンザキさんが休職中で、
仕事に行きたいんだけれども行けないとか
怖いという気持ちを抱えていらっしゃるようですが
カンザキさんが休職をしなければならないほど、
気持ちが落ち込んでいた、なにかきっかけ
教えていただきたいのですが、具体的なエピソードで何かありますか?

あ、はい。
あの、私が勤務しているのは…、冷凍食品を作るような、
食品加工メーカーに勤務しておるんですけれども
2年ほど前に、そちらのコンプライアンスを担当する部署に異動になりまして
そこで、ご存知かと思うんですけれども、
冷凍食品に、農薬が混入するという事件がありまして

んー、ありましたね。

はい。
私の会社はその会社とはまた違う会社なんですけれども
私の会社も同業種ということで、
会社としての食の安全とか責任について、
しっかりとした…責任を果たせるような、PRが出来ないかという事で
社内の内規も、もっとしっかりしたものを提出できないかというような
要求を上のほうから受けまして、
今までそういった事例が私の会社のほうでは無かったもので
それを、作っていたのですけれども、
なかなかそれがうまくいかない状態が長く続きまして-

どのぐらい長く続きましたかね?

はい、その話が出たのが2年前ですので…、11年…、
1年半以上になるかと思います。

んー、1年半以上の間、すごくそういう緊張した感じで
お仕事を続けてこられたということですか?

んん、そうですね。圧力はあったと思います。

んー、どんな圧力を感じてらっしゃったか
具体的に教えてもらってもよろしいでしょうか?

はい。先ほども申し上げたんですけど
私の部署では、その、消費者への説明責任とか、
企業としての食の安全に対しての指針、
内規というものを揃えなければいけないのですけれども

それについて、前例があるわけでもなく、資料を作って取締役会の方に、課長を通じて
私が作成した資料を、提出しなければならないのですけれども
その、半年ほどかけて、作った…、資料だったのですけれども、
私の努力不足も当然あったのですけれども
会社の有力な方のほうから「全くできていない」と

んー、全くできていない。
何が出来ていない、ということですか?

基本的な、恐らくその方がおっしゃっている、考えてらっしゃる、
その…、コンプライアンスに基づいた説明責任や、安全性のPRのコンセプトと
私が考えておった、資料を集めた、会社としての方針をまとめたレポートの間に
食い違いがあったのだと思うのですけれども。

んー、そうすると上が考えていた、こういう事をして欲しいという内容と
カンザキさんが出したレポートの内容が、少しあっていなくて
それを上司からなにか言われたということでしょうか?

はい。決定的にはそうなんですけれども
それ以前にも、その、半年、1年間の、資料を作っている間…
事故的な、突発的な、事故のような、そういうような
その、業界全体を揺るがすような、問題があったために、
その、わが社としても、方針を出すのは、早期にならなければいけないということで
かなり仕事を、急いでやった、急がなければならなかったという状況がありまして、
課長代理の方からも課長からも、
その、休日返上でやれとか、そういうことは一切無いんですけれども
そのようなプレッシャーを、無言の圧力と言いますか、
そういうものを感じていたということも、ひとつあります。

そうですか。
そうすると、上司からは休日返上して働けっていう
具体的な支持はないんだけれども、
それはカンザキさんが早くしなければいけないということで
休日返上を実際にされてこられたのかな?

はい。

はい。

休日は当然返上してやっておったのですけれども
それに対しての結果が出ていないということが、
一番大きな落ち込みの要因だったと思います。

結果が出ていないというのはどこら辺で判断されましたか?

取締役会で、私が作成した資料が、私の部署の課長のほうから提出されたのですけれども
その場で、さきほど有力者と申し上げましたが、常務の方から、
「全くこのレポートは使い物にならない」というような評価を貰いまして

(ん~)

それを、課長本人からではなく、
代理の方から伝聞で聞かされたのが非常に、大きいショックでした。

<15分経過>

あぁそうですか。直接言われたのではなくて、
代理の方から、君のレポートは役に立たない、という風に言っていたよ
ということで聞かれたんですかね?

はい。

はい。その時のカンザキさんの気分はどのようになりましたか?

…。1年、半年もかけてずっとやっていたことでしたので、
目の前が真っ暗になると言うか、立っていられないような、
めまいを感じるような、そういう感覚がありました。

目の前が真っ暗になったり、めまいがするような、ショックでしょうかね?

はい。全身の震えとか、そういったものも含めて。

んー。それを聞いたとき、気持ちが落ち込みましたか?
それともすごく不安になりましたかね?

…。落ち込むのに近かったと思います。
どう、どうすればいいのか、どうしていけばいいのか、分からなくなりました。

(授業の終了時間のため、ここまで。)


ここまでで、始まってからだいたい16分経ってますね。
このインタビューはだいたい30分くらい続きます。
今日は時間の都合でこれで終りにしますが、
このカウンセラーの相槌の打ち方とか、
確認をしながら話を進めていますよね
「こういうことですか?」「こういうことだったんですね?」と。
そういうところが見習っていただきたいところです。

じゃあ、今日のところで質問あれば-
よろしいですか。

このDVDは図書館のものなので、関心のある方はどうぞ。
じゃあ今日は終りにしましょう。
どうもおつかれさまでした。



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