2011年11月10日木曜日

家族療法‐7 言動の視点


*前回は先生が学会のため不在で「リバーランズスルーイット」を見た回、自分は欠席

・フィードバックの返却&質問のこたえ

(学生)ジェノグラムにペットは書き込むのか?

それは是非描いてください。
実線ではつなぎませんが、大切な資源という事で
私は周囲に三角形で描いておきます。何の動物か(犬、猫)、どんな役割か(子どもの代わり)
また関係の線でつなぐことはできますよね。
それは家族以外の重要な人間関係における書き方と同じですね。

(学生)実際のカウンセリングで造型法をしたときに、その反応にセラピストが困る場合

造型で距離感、向きが見えたところで、
これまで気づいていなかった問題が露呈されて口論とかが起きたりっていう心配。
それじゃカウンセリングにならないんじゃないかという意見が書かれていたが。
これはいい気づきだと思います。これでセラピストが困るか困らないか。
どう思われます?

これは、そこからセラピストがその口論なり問題から一歩距離をとって見てあげられるかどうか。
とっても大切なことに気づいて、この後これをどう生かしていこうかとこっちが思えれば
それはその後に生かしていけるんですよね。
そういう意味では、造型法をやる前にある程度の予測、準備をしておくことは
役に立つかもしれませんね。

言い争いという言葉がああったのですが、
それは、今日やる「言動の視点」にも関わる事です。

これまで「文脈の視点」
ジェノグラム、家族ライフサイクル
ここから皆さんと考えてきました。

*プリント配布『家族療法の概念を統合的に取り入れた援助を目指して

1.静の作業としての「文脈の視点」context
2.動の作業としての「言動の視点」behavior

○「言動の視点」
いま、ここHere and Nowで交わされるやりとりに注目する。
関係を可視的側面で捉えるので、家族の中で進行している事態を単純化し、
問題維持的な行動パターンを見つける
この一種の安定状態変化を作り出すように、言動レベルの変化を起こす援助。

これまでは家族の背景についてみてきましたね。過去についても。
今回は、いまここ、により注目していきましょうと。
「お母さんがしかっても子供は反応しない、というやりとりがある」とか
目で見えるところ(=可視的)
それを単純に、どんなことが繰り返されているのだろうか。という所に注目して。

パターン」という風にここに書かれていますね。
以前、子どもを起こそうとするお母さんと、それを聞かない子どもという例えの話をしましたね。
それが繰り返される、心地よくない会話のパターンが続いているというのは
問題が維持されているということ。
繰り返されている、ということは「安定している」と私たちは捉えるのですが、
そこに変化をもたらそうとする、ということ

普通安定というとプラスの意味で捉えがちですが
この場合はマイナスであっても安定という風に表現しています。
*ネガティブプレジャー的なものも視野に入れている言葉ということか。

たとえば、朝起こす場合だと、
その声のかけ方をこれまでとは変えてみよう、と。
どう思いますか?

(学生)あえて起こさないでみる。

なるほど、これも一つの方法ですね。
そうされるとどう思いますか?

(学生)自分でおきようかなと思う。

はい、こういうような変化を起こそうということですね。
かならず望ましい変化が起こるとは限りませんが。そういう狙い、と。
どういう風に介入していくかは色々なパターンがありますが、
少なくとも変化を起こしてみよう

(学生)変化について家族の同意をとってからやるのか?

家族療法の流派による違いがある。
どの程度の介入が必要化にもよる。
あまり介入しなくてもよくなりそうだという場合には、提案→同意と言う事もありますし、
問題がもう10年も続いているというような場合は、
ある意味権威的に、宿題という形で行うこともある。

最近の傾向としてはできるだけ家族の力を使ってという事なので
あまり権威的な方法はとられませんが。

ひとつ皆さんにお伝えしておきたい話としては-

日本で家族療法が導入された頃、20年以上前ですが、
ワツラウィック(Paul Watzlawick)先生がこんな話をされました。

サンフランシスコの大きな2つの橋があります。
ゴールデンゲートブリッジと、もうひとつ湾の中にベイブリッジという黒い橋。
このような2つの橋があって、先生がクライエントに宿題を出しました。

そのクライエントは博士課程の論文を書き終えられなくて困っている
完璧主義ゆえに完成させられない。
バックグラウンドとしては、イタリアからの移民で家族に博士課程を出た人はいない。
家族の希望の星というような立場。
その人にこの先生は、(ビデオで面接を見せてくれたのですが)宿題を出した

2つの橋が見える場所、観光スポットなのですが
そこへ行きなさいという宿題(この場合はちょっと権威的な形ということですね)
そこであえて、
ゴールデンゲートブリッジを見て「これがベイブリッジですね」と質問しなさいという宿題。

次の面接の時に
どんな結果があったと思いますか?
完璧主義的にやろうとして最後まで仕上げられないという
「安定した問題」があったんですよね。

どんなことがあったと思います?
全く知らない人に、あからさまに間違ったことを聞くということ、
これはこのクライエントにとって、すごく恥に当たる事ですよね。
まず、聞くということ自体、その人にとってはつらい事ですよね。
しかもまったく知らない人に聞く。
恐怖を感じながらやったかもしれませんね。
どんなことが起こったでしょう?

これは先生の意図が成功したんです。

聴いた相手の人が、普通に親切に教えてくれたんですね。
つまり、少々間違ったこと、完璧でない事をやっても、
それで大丈夫だという体験を宿題を通してやることが出来た、と。

ということで、それを次の面接で報告してそれ以降、
完璧でなくても出来ている範囲で提出することが出来たということで
博士論文を完成させられた、と。

いまお話したのが、プリントの21に書いてある MRIのブリーフセラピーですね。
ここで先ず大事なのは「パターンを見つけましょう」ということです。
これは偽解決」としてのパターンを見つけましょう、ということです。
英語ではattempted solutionといいますが。

いまの話の完璧に物事をこなそう、というのもこれですね。
解決と思って試みてきたが、それが本当の解決じゃないんじゃないか、と。
日本語ではちょっときつい表現ですが。
そして、別な解決を見つけましょう、と。
なので、まず偽解決にセラピストが注目してそれを明らかにしましょうと。

その次の対応には幾つかあります。
2.2 構造的家族療法:ジョイニング、家族構造に変化(日常のやり取り、バウンダリー)
ジョイニングというのはミニューチンの言葉ですが、
セラピストがまずその家族のやり方、家族のコミュニケーションの文化にジョインする。
個人のカウンセリングだとラポールの形成という表現される事ですね。
家族だとジョイニングというと。家族の雰囲気を尊重してそこに入っていく、と。
家族なりのまとまりかた、複数のあり方をこちらが尊重して入っていきましょうと。

バウンダリー(境界)がなくなる、というのは「距離が近くなりすぎる」ということです。
そこに境界を作ってみましょうというのが構造的家族療法のやり方です。

・以前配った資料 
『よい相談相手になるために』(キリスト教カウンセリングセンター編, 2005)を出してください


この6章はだいたいこのクラスの進行に沿って書かれています。
じゃあ、P134の事例21を読んでくださいますか。

【事例21
父母ともに30代。小学校6,4,1年生の3人きょうだいの5人家族
次男の乱暴な行動に手をこまねいていた。
その家族が家族造型を作ってみた様子
配置をみると、次男は一人遠く、その他の家族メンバーは群がっている。
次男の体の向きはは横を。顔はみんなの方を向いている。
特徴的な姿勢や表情としては、次男の腕を振り上げるポーズ

この家族の主訴は、次男の乱暴行動に父母が困っているということで来ました。
そして家族造形法を通してみていったと。
次男のポーズは、力をうちに閉じ込めているんじゃなくて、何か分かって欲しいというような姿勢ですね。

その後、この面接ではどんなことをしたか。
互いの思ったことを語り合ってもらって、
「これから目指したい造型」を家族が作りました。
それが今作った形とどう違うんだろうか、と。

すると
次男が家族の輪に近づき、父親も次男も輪の中心を向いている。
次男の振り上げた腕はおりていて、顔の表情の険しさが消えていた。
長男は家族の輪から少しはなれ、中学生になる準備がとれそうだった。

ここでお伝えしたいのは、文脈の視点を通して
これから自分たちのやりたいことが見えて、カウンセリングが終わる家族もいる、
しかしそれではまだ自分たちで出来ないという場合に
「言動の視点」による支援に移るというつながりを皆さんに理解していただければと。

ではP136
どこで納得がいくか決めるのはあなた自身です。自分の気持ちに耳を傾け、気づくのはあなたです。
・問題解決に向けての動の作業
家族が問題を解決する能動的なステップ
症状や問題行動は、対人的な相互作用交渉の中で支えられ、維持されています。
コミュニケーションのレベルでの解決を具体的に目指します。

・解決に踏み出す人はあなた。
問題は関係の中で維持され、解決もまた、関係の中にあります。
誰が解決に歩みだすことが出来るでしょうか。

家族療法のことを平木先生は「関係療法」と表現しています。
家族がみんな来なくとも関係にフォーカスすれば支援できるという意味で。

過去と他人は変えられません。家族の問題行動に関連して、自分にできることを探してみましょう
問題をおこしている人がいけないという律法的な見方をしても問題解決につながらない時には福音の愛を実践することが重要です。
(これはまぁキリスト教新聞社から出た本なので宗教的な言葉になっていますが)

問題を起こしている人が変わらなければいけない、
というのが一般的な解決法かと思いますが、
それで変わるなら良いのですが、
そうではない場合、変わるのは誰でも良いというような円環的な考え方。
問題の原因は次男だけではない。

P138
解決への近道は解決した目標を明確に決める事です。どの場面でのやりとりを変えていきたいのか。

何をどう変えたいのかということを具体的に聞いていきます。
先ほどの事例では

次男が三男のおもちゃをとりあげる場面で、自分の関わり方を変えてみたいと父親はいった。

ここで場面が出て、
その次にまず、現在どのような「偽解決」が行われているか
違う言い方をすると「問題解決の悪循環パターン」が起きているかをお父さんに聞いてみましょう、と。

目標に取上げた場面をビデオにとってリプレイするように、その場面でのやりとりを思い起こしてみましょう。

これは普通はあまりしない事ですよね。ビデオのようなリプレイ
なかなか本人から聞きにくいという事もあるが。
「客観的にその時の様子を思い出していただけますか」と。
そうするとパターンが見えて気やすくなる。
先ほどの事例を見ましょう

次男が弟のおもちゃを取上げる場面。お父さんはしつけとして「また弱いものいじめをしているのか!」と大声を上げてお尻をたたいていたという。しかし、見方を変えると父親がしつけているその言動によって、次男の問題行動が繰り返されていると見ることもできる。

何気ない言動や、善意のしつけが繰り返されているうちにパターン化する。
問題をかえって維持するような結果になっている。
*アルコール中毒におけるイネーブラーみたいなことか。
enabler: 何らかの依存状態にある人を支えて、結果的に依存を後押ししてしまう人のこと


どうでしょうか。
みなさんの事例に沿って考えてみてください。
どんな問題、パターンが起こっている可能性があるんだろうか、と。
どんな偽解決が起こっているのか。これからちょっと考えてみてください。
ではグループに分かれて話し合って下さい。 
・グループで話し合って発表があって終了

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