2011年11月17日木曜日

家族療法‐8 認知行動療法的家族療法「差異を見つける」

2限 252 石井千賀子 

リアクションペーパーの返却&質問への答え

(学生)変化が出るのにどれくらいかかるか?

家族のパターンにも寄りますが、
期待する変化によっても期間はことなるということをご理解ください。
べつのいいかたをするなら できるだけ小さい変化を最初は望もう、ということです。
そして無理なく大きな変化へということですね。

(学生)良いパターンでも悪影響はありますか?

という質問がありましたが、これどう思われますか?
確か先週「クレヨンしんちゃん」か何かの例で、

お母さんが遅刻しそうな子どもを車で送っていくというパターン」

それは、皆さんはどう思う?これは良いパターン、それとも問題のあるパターン。
これは見る人によって違います。

それだけ聞いてどう思う?

(学生)話だけ聞くと悪いようにも聞こえますが…
バスが使えるときはバスを使うというような柔軟性があれば、
車を使うこと自体は悪くないと思います。

それがしょっちゅう起こっている、とすると問題だ、と。
ほんとのお話の中での頻度は私よく分かりませんが。
それが良いパターンとしてあるとして、
その悪い影響が出るというのはどういうことになりますか?

例えば幼稚園の子どもを車で送り迎えする
そのこと自体はマイナスではないのかもしれない。
だけれども、そこで他に気にしなくてはいけないことというのは?
例えばどんな悪影響が考えられる?

(学生)特に無いんじゃないでしょうか

例えばこの子が小学校の3年生とかになって
同じことが起こっていたらどうなんだろう?

(学生)幼稚園バスが来るまでの時間内に支度をする習慣を
小さいうちに身につけることが大事だと思うので。
間に合わなかったらお母さんが送ってくれるという甘えが
身についてしまうのは悪影響だと思います。

そうですね。つまり年齢とその頻度
その解決法が次の発達段階にどう影響するかを考えなくてはいけない
ある段階では良いパターンかもしれないが、それが次の段階の時にどうなるか。

他に家族システム自体として考えたらどう思いますか。
例えばその子が5歳の子であっても、家族システムの見方からすると。
お母さんと子ども以外にも悪影響が出る可能性ということを考えると?

つまり、
家族の中に他にどのメンバーがいて、
その人はどんな見方をしているんだろう?ということです。
この事例だと、お父さんや、さらにその上の世代がそれをどう見ているのか、と。

周囲が良いことをしているとみているのか、甘やかしているとみているのか。
そしてその見方が子どもにどういう影響を及ぼしているのか。
それによって雰囲気が違うよね。
それも含めて考えないとそのパターンが好ましいのかどうかは判断できない。

(質問)安定している時に変化を起こそうとしたら望ましくない変化が起こった。
そのときはどうするのでしょうか?

今の事例だと、お母さんが車で送るのを止た場合、
それで幼稚園を休んでしまった、とかなると好ましい結果ではないですよね。

(学生)バスの時間に間に合うように起こす、とか-

お母さんが送るのをやめたことを、今後につながるようにする、ということかな。
つまり、一つの変化に対してマイナスの結果が起きたとき
結果によって変化も駄目だったとするのか、
それとも変化の起こし方を変えていくのか。

一度うまくいかなかったから変化を止めて元通りにしましょう、
というのは避けたほうがいいんじゃないか。
その際に変化のプラスの面を探しながら。(リフレーミング)
起こす時間を変えるのもいいかもしれないし、
家族の中での変化にはどんなことが起こりえるのか。
それは変化させるというのは今までの長年のパターンを変えるわけですから
すぐに良い事になるとは限らない。

ひとつご意見として皆さんに紹介したいと思ったのは

(学生)静の作業(文脈の視点)と動の作業(言動の視点)の
繋がりが分かってよかったです、と。

静の作業とは、年齢、家族構成、家族で大切にしていること、
信念、考え方がバックグラウンドがわかること
発達段階やジェノグラムによって。
それがわかると「車で送ること」が
家族にとってどういう位置づけになっているか分かる。

このことが動の作業に入って言動を見るときにも
どのような家族でそれが起きているかわかると、さらに分かりがいいですよねと
私もこれはいいポイントだなと思いました。

ではここまで良いでしょうか。

じゃあ続けていきましょう。
先週お渡しした「家族療法の概念を統合的に取り入れた援助をめざして」プリント
安定、が必ずしもいいことではない、と(特に問題が起こっている時は)いうことでー

先週は問題維持のパターンを見つけるということをしましたね。
その際の現在の家族のパターンをattempted solution、偽解決と言う、と。
たとえば「遅れそうな時は車で送るのは当然」が
偽解決かもしれないと、まずは気づきましょう、というところが
先週やったところでしたね。

その後は、ジョイニングして、家族構造に変化を与えていったり、
例えばカウンセリングルームに入ってきて、
椅子にどのように座るかという事でも
家族の日常のやり取り、バウンダリーが見えてきますよね。

次いで、今週やるのが
認知行動療法的家族療法の「差異を見つける」という所に入っていきたいと思います。
まず目標の場面を決めて
コミュニケーションのレベルで「差異を見つけましょう」と。

認知行動療法的家族療法、心理教育:
家族内コミュニケーションに変化を起こす
 1)解決に歩みだす人は本人であることを明確にする
 2)目標設定:目指すイメージを具体的な言動で表し、実行する
 3)コミュニケーションのレベルで差異を見つける、

偽解決が見えたところで、
問題を解決しようというところに向かうのは誰なのか、と。

皆が「相手が変わればいい」と言っていたらどうでしょうか?
それだと問題解決は起こらないですよね。

この時に、言っているその本人が、
問題解決のスタートをきる、と。
「あなたはどう変わりたいのですか?」と一人ずつに聞いてみると。
「あなたは-?」という聞き方をする

そしてその次が「具体的にどんな場面でするのか」という「目標設定」です。

そして差異」をみつける。別の言い方をすると「例外、です。

お母さんが子どもを車で送る、ということについての例外が起こっていないかをみる。
家族の中での安定が破られたというような、変化の起きていることがたまにでもなかったか考えてみる。

例えば「車がない日があった」という例外があったとして
その時にどういう解決方法がとられた可能性があると思いますか?
これはあくまで私たちが考える上でのことですので、実際のアニメとは無関係ですよ。

(学生)徒歩でお母さんが連れて行く

それもひとつだよね。お母さんはどうやってその時間を取ったのか、
とか色々考えられますね。
そういうことが一回起きているとすると、そのことが使えるかもしれない。

(学生)タクシーを使う

そうですね。お母さんが歩いて行ってたら仕事に遅れるかもしれない。
そうなるとしたらタクシーも手ですね。

そうやって柔軟に考えてみて
そのことの中で変化に使えそうな例外を探してみるという事
これがどうやって家族の安定を破り、今後の好ましいことにつながりそうか。

以前お配りした資料「良い相談相手になるために」
ここの【事例1】について

長男(33)と夫(65)が険悪な関係なのを
困ったお母さんA子さん(60)が相談に来た。
夫(65)と二人で暮らしている。
長男以外の子として長女(28)既に結婚して孫がいる。
その夫の父母は亡くなっている。

このお母さんは何が困ってカウンセリングにきましたか?
A子さんは、息子と夫の仲が険悪で(ジェノグラムのギザギザですね)それが
妻として母として心配だ、と。

長男は素直な息子で、3年ほど前までは夫とうまくやってきた。
しかしここ2,3年は不機嫌で夫と喧嘩をして数ヶ月前にうまく出て行ってしまった。

【事例12
・素直だった長男が変わってきたのは父方の祖父が死亡した5年ほど前から
・祖父に長男はかわいがられていた。
・町長をしていた祖父、地域や親戚のまとめ役だった父から期待をかけられていた長男
・成人しても良い子を通してきた長男は自由な長女と対照的だった。
・夫は、未婚である長男に早くもどって来るようにといっている

この長男が父と険悪になってきた時期が
祖父の亡くなった時期と関連していると。
この祖父は孫の長男を可愛がっていた、と。
家族の中での居心地の良さをつくってくれていた祖父が亡くなって、
5年前という事は28歳だった長男に変化がおきた。

お父さんは地域や親戚のまとめ役、と。
この子はではどんな期待を祖父や父から期待されていたでしょうか?

(学生)跡継ぎ

そうですね。この家族にとって男の子は重要で
長男も下に男の子はいないということになると、期待を一身に負うことになる。
これは家族の文化のようなものですね。役割の期待

そしてきょうだいのなかでも女の子がものすごくシッカリしていたら
また別の役割を取ることがあるかもしれませんが、
ここで分かっているのは、妹である長女は自由に振舞っている、と。
つまり親族や地域の期待に応えるようなキャラクターではないと。
是非、こういうこともジェノグラムを作る際に書き込んでください。
家族のつながりをみることがポイントなので。

そして息子は未婚なので家に帰ってきて欲しいと夫が言っている、と。
A子さんが夫の怒りのような感情を(以前話したような)ドミノ現象で受け取って
自分も動いている、「困った困った」と。それでカウンセリングに来た。

そうですね、そんな風に見えてきて
【事例13】ジェノグラムに書き込む
【事例14】では家族ライフサイクルをみる、と。
この家族は今このライフサイクルのどんな段階にいますか?
A子さんから見ることにしましょうか。

(学生)5

そうですね「子どもの巣立ちとそれに続く時期」と。
でも、A子さんとしては、
「子どもがシッカリと家族に足を置いている時期」とみなしていたので
息子は当然自分たちの中にいるはず、
結婚もしていないのに勝手に外にはいかないはず、という思いがある。

それが実際には5の段階だとすると
その巣だっていった息子とどういう関係を持つべきかと、
カウンセリングの中で考えていった。
そして「私たちの考え方もかえないといけないのかな」と
まず文脈の視点から気づいていった。

これでA子さんがどっしりしていられるなら
そこでカウンセリング終結ということもありえる
しかし、そうはいっても夫が不機嫌で困る、
もう少しカウンセリングを続けたいという事ならやる必要がある。

この場合はA子さんは一人でカウンセリングに来ているので
問題の解決にスタートするのは「本人であるA子さん」ということになる

【事例16】(解決に踏み出す人はあなた)
・長男が変わらなければ問題が解決しないという見方をすると
 家族の怒りや心配はつのるばかり
・長男の原因は周囲の人との相互のやり取りの中で起きる、と見ると
 A子さんの言動も長男の問題に関連があるかもしれない

【事例17
A子さんは長男と夫の冷戦が問題という見方をやめて、
A子さん自身が問題解決に参加できると確信し、
自分が関わっている場面に思いを巡らせた。そして
夫に頼まれて電話をして何かを聞いても、
長男が返事をしないで無言でいる時の電話口のA子さん自身という場面を選んだ

*山本直樹の「ありがとう」を思い出す。




【事例18】(パターンを明らかにする)
長男が無言の時にA子さんは
「また返事もしないのよ。困ったわね」と夫に言ってから電話を切る

これが夫の長男への不満を高じさせているかもしれない。
あるいはその言葉を聞いて長男は
父母が連合して自分を非難しているように感じ、
態度をいっそう硬化させているのかもしれない。

そして(やっと今日やるところにきました)
ここで「差異を見つけましょう」と。

【事例19】(差異を見つけて、変化を支える)
・長男に対してはずっと同じパターンだということなので
・長男と長女が返事をしないときの対応に差異があるかどうかを考えた。
・長男の時と長女の時は対応が違う。
・長男のときだと責めてしまう。眉間にしわが寄っている。
A子さんは
「長男に対しても、長女に言ったときの口調と
同じように言う事をためしてみようか」と言う。

変化をつくり出す時はまず自分(この場合はA子さん)の中で
変化のポイントはあると信じて探すところから始まるのです。

*信じて…。自信は無いけれどカウンセラーの勧めにしたがって
「探してみようかな…」くらいじゃ駄目なのかな。

じゃあ、これまでやってきたグループに分かれて
15分ほどこの「差異をみつける」ことについて話してみてください。

(引き続き皇太子一家をモデルにしてグループで話し合い)

問題は、お母さんが娘心配のあまり学校にまでついていってしまうこと
お母さん自身も心身の不調を抱えていて、医者にかかりながら復職の途上
相談してきたのはお父さんである皇太子。

解決へのスタートさせようとしているのは皇太子
問題場面はお母さんが娘の学校についていくこと、またその母子関係について
例外は、お母さんが風邪で寝込んだときに、お父さんが付いていくということがあった
お父さんの時にはそんなに娘の傍についていなくても大丈夫なようだった。


「差異(例外)」を見つけて、その家族の持っている力を使おう、というのは
既に経験があることを使うので、変化としてはハードルが低い、
トライしやすい変化
来週やるようなコミュニケーションの変化に比べると起こしやすいですよね。

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