2011年9月29日木曜日

SST入門講座‐2 SSTの基礎理論と対象者

4限 227 正田久子
さて、はじめましょうか。あついですか?

まずは、出席をとりますね。(読み方間違っていたりしたら言ってください)
じゃあはじめましょう。

○では、最初に私の「地域生活支援センター」での取りくみをご紹介します。
昨日、都が行なった合同企業面接会がありました。
障害者を対象に企業がブースを出して面接。

その面接に備えて、模擬面接を私が担当して-
あらかじめ、アルバイトの募集要項をみていて、
あるメンバーは病院の給食補助、厨房の仕事を目指していて
家から近いので通いやすいから、というのがポイント

その方は、いまは立ち食い蕎麦屋でのアルバイトをしている。
朝の6から9時までやっている。
洗い場ということで雇われているが、
カウンターが忙しくなると、あれやって、これやってで色々仕事が来ちゃう。
しかしそれは混乱してしまって無理なので、障害者枠で、と。
アピールポイントとしては経験があるという事。

これからチャレンジしようとすること。
就職面接はSSTのとっても効果がある練習の場です。

とくに前日だったので、現実に即して、
ある程度決まっていたので、みんなの意欲も高く、良い練習ができた。

ではプリントに行きましょう

2.ソーシャルスキルとは(先週からのつづき)

5)ソーシャルスキルの獲得(社会化):経験学習と観察学習
・私たちはひとりで成長するわけではない。やり方はふたつ。

①経験学習 
:基本の「キ」、挨拶。これはもうイチイチかんがえるまでもなくやりますよね。
相手を見て、頭を下げたり、笑顔になったりという事をやっている。
しかしこれ自体は無意識の内に憶えたわけではないはず。

外国語を習ったときのことを思い出してください。日本語とは言い方も仕草も違いますね。
最初は「えーーっと」と考える。
私たちは育ちゆく中で、色んな人の「こんにちは」を見て、真似して、
それが「いい子だねぇ」と良いフィードバックを受けて、
そこはかとない気持ちよさ、これをやっていくとうまくいくんだ、と経験的に学び、
自動的にできるようになっていった。
そのひとつひとつについて、最初は意識的に、重ねるうちに無意識でもできるようになる。
このプロセスを重ねることで一つ一つのスキルを自分のものにしてきている。

⇒学習理論
「いい子だねぇ」的な良いフィードバック=強化

すべての行動は学習の結果身につけてきた。
しかし誤って身につけてしまったものもある
消去

②観察学習
たとえば、よくわからない宗派のお葬式でお焼香という場面。みなさんどうします?
模倣、ですね。真似をする
例えば、お子さん、兄弟のことを考えてもらうと、
長子は全部いろいろと親から教えてもらうが、
23子は、上の子の行動の「観察学習」の結果、叱られない術をみにつけたり-

あとでご紹介しますが、
壁の右側のポスター「練習の順序
5.必要ならばお手本を見る」
これは観察学習の理論を取り入れています。お手本を真似てやってみる。

次の基礎理論でも触れますが、観察学習は
「社会的学習理論」にもとづいています。

3SSTの基礎理論

認知行動療法(CBT)、社会的学習理論、グループワーク理論

・認知行動療法;いままでにも触れてきましたが「受信-処理-送信」のプロセス。
適切な反応を考えて行動している。こないだ負けるが勝ちじゃんけんをやってみましたね。
あれでお分かりいただけたように、私たちは行動するときは「考え」の下に行動している。
ということでの「認知行動療法」がSSTの理論の基盤で大事な基礎理論です。

いま、CBTは色んな分野にひろがっていて、
精神科領域では、
うつ病、人格障害、アルコール依存、薬物依存、
いろんな方に、薬剤と併用してCBTをやると効果が上がる、という実証の結果が出ている

もうひとつ
グループワーク理論
 SSTグループ11両方あります。いまのここもグループですよね。
その中では人間関係、「グループの力動」それぞれの役割が決まってくる。
たとえば「すごーく発言する人」「聴いている側の人」。

リーダーがしなきゃいけないことは、まず「リーダーが信頼される」ということ。
これがないとグループワークはうまくいかない。
もう一つ大事なのは、「メンバー同士が良い関係、信頼関係をもつ」ということ。
もう一つ、ここでやる活動、私たちはこれから「SSTを学びます」が、
活動への「興味
この3点がそろうとグループワークは上手くいく。

○グループが上手くいくための要点3
リーダーが信頼される」。
メンバー同士が良い関係、信頼関係をもつ
参加メンバーの活動への興味

リーダーにはこのことを意識して頂きたい。
しかしこれだけ人数がいると全体に目を行き届かせることは難しいので、
リーダーと、コ・リーダーで手分けをして進めていただきます。
(サブリーダーとは異なるコ・リーダー)

4SSTの対象者

・社会生活に必要なスキルを学ぶ機会がなかった人
-例えば、家の中でコミュニケーションがない家庭で育った場合、
あるいは引きこもり不登校のひとは、仲間集団で学ぶことを機会を逸してしまっていたり。
・入所、入院などで社会生活から長く離れていたためにスキルを忘れた人(*忘れる…)

-あとでビデオを見ていただきますが、
長い間入院されている、慢性の精神障害を持つ患者さんのグループが出ます。
そういうかたは、病院の生活は食事が出るし、あまり自分でやら無くても済む状況。
この頃は「退院促進」といって、そういうかたも地域に戻るという事をやります
当たり前の生活のために、改めて学びなおさなくてはならない

たとえば、電球が切れた、というときにどうする?というようなこと。
電球を電器屋に買いに行くことを思いつかないこともいる。
グループホーム、アパート生活などでの社会生活上のスキル。

また(私も手伝っている)更生保護施設
例えば-面接時に、私が違和感を持ったのは
手を(指を広げて、腿のすごく上のほうに置かなくてはならない)置く位置の違和感。
ドアを入るときに「○○入ります」ということが普通だったり。
世間とは異なる行動が習慣付けられてしまっている。
 
しかし、今後は面接の時にそれが必要なくなる。
ちょっとしたことだが修正が必要なこと。

また、刑務官の方にうかがったことに―
刑務所の中で就職SSTをやったとき。
中では集団で列をなして歩いてくる。
私とすれ違う時は、「顔を見てはいけない」。
また、通り過ぎるまでは「壁の方を向いていなくてはいけない」(目を合わせてはいけない)
ちょっとずつそういう「文化の違い」を超えて、戻ってくるために必要なこと。

・病気などのため学習したスキルを失った人
統合失調症の方はまさにこれですね。
脳機能障害考えがまとまらない、というのは統合失調症の症状ですね

通所施設の主婦の方のはなし、
あるときスーパーに行って、夕食に何を買ったらいいか全然考え付かなくなってしまう。
今までは買えていたのに。病気のために考えがまとまらない、という症状。
薬によって症状が改善されるのに従って、やり方を取り戻していくことのお手伝い

・新しいことにチャレンジするために準備が必要な人
-これはもう、結論から言うと「全員」です。
就職試験を受ける。新しいお仕事について、環境になれなくてはならない。
新しいチャレンジへの準備。

(学生)コミュニケーションにおいて目を合わせることの意味とは?

掲示にある「よいコミュニケーション」の「目を合わせる」。
実はこれはアメリカから来たもので-、日本人の感覚とはちょっとちがうかも、
(また出発点は統合失調症の人むけだったという要素もあって
ということで、目を合わせることのほかに、
座る位置、座る角度、ということも大事になってくる。

SSTは「マナー教室」とは違う 
ポイント-私たちの心地よさはそれぞれ違いませんか?
それを「うまく伝えるようにやっていく」

色んなやり方を試してみましょう、と-SSTは試す場だから
最近は発達障害の方もSSTをやりますが、
この「はっきり大きな声で」というのも
その融通がきかなくて常に大きな声となっちゃうとまたそれはそれで問題だし-

では、プリントは今日はここまでで、

●「練習の順序」(掲示ポスター)

1.練習することをきめる
2.場面をつくって1回目の練習(行動練習・行動リハーサル)をする
3.よいところをほめる
4.さらによくする点を考える
5.必要ならばお手本をみる
6.もう一度練習する
7.よいところをほめる
8.チャレンジしてみる課題を決める(宿題
9.実際の場面で実行してみる
10.次回に結果を報告

このポスターはリーダーには助けになっていてー

私がある精神科の病棟の患者さんになってみますので、
どなたか看護師役をやってもらえますか。
たばこ、ナースステーションに預けていて、
その都度もらいにいく、タバコを一本ずつ貰って喫煙所で吸う
というシステムになっているところが多くて。

では、看護師役の学生は立っててもらって-

皆さんにして欲しいのは、
「3.よいところをほめる」
これは「強化」に当たるところです。
言語、仕草、両方を見てください。

○先生のデモ

・手を出す仕草
・お願い、という言葉
・言葉を言う距離
・声の大きさ

○そしてさらに良くするところ
「4.更に良くする点を考える」にいきます。
SSTは加点方式です。100点以上にするには-という発想

たとえば「すみません」を付け加えてみましょうということになったら、
「すみません、を言ってみましょう」と。

(先生が、すみません、を言ってくれる学生探し)

(学生の手本)「すみません、たばこ、おねがい」というセリフで。

これで、一つ、ステップアップできたかな、とういことでこれの練習、そして褒める、と。

大事なのは、これを宿題(課題)にする。
「8.チャレンジしてみる課題を決める」
そしてそれを実際やってみて、報告をする。
そして、それを褒めることで、また強化が

わたしが、これを学ぶことで何を得るか。
お願いする時にいまは「もの」しか言っていない。
しかし、そのまえに「すみません」を言えるようになるということは
応用の効くフレーズを学んだという事

さて、いま「練習の順序」をざーっと見ていきましたね。
褒める=強化
大事なのは、日常の中でやって学ぶ、ということ。なぜか。
RPの場合は、タイミングが調整できるが、実際の看護婦さんは他の仕事の中で動いている。
RPからそれはかなりのステップアップ。
たとえば実際にやってみても、会話以前に
「看護婦さんがつかまりませんでした」ということもあるかもしれない。
そうなったら、どういうときに看護婦さんをつかまえるか、を課題にまたやっていく、と。

さて、ではビデオを見てみましょう。
1番目のセッションは、慢性の入院患者
次は急性期(発病して間もない若い患者さんのグループ)、
最後地域生活を送っている患者さんのグループ

●ビデオ

①慢性の入院患者のSSTグループ

名古屋市 北林病院、昭和初期の設立、長期入院患者も多い。
SSTをスムーズにやるにはウォーミングアップが重要。
例)
・誕生日の早い順に座る
だいぶ堅くなっていたのでリラックスのために。
(ソーシャルワーカー吉田みゆき氏)
誕生日を聞くことだけでも交流が持てる
(どんなウォーミングアップが有効?)
・一言言って自己紹介。「私の好きな歌手は-」
・気分を顔に表して(患者が描く)自己紹介

言葉を使うものとして
・夏の楽しかった思い出を話す。
からだを使ったものとして
・フルーツバスケット(冬バージョンとしての鍋バスケット)
大きく二つに分かれる。

SSTは患者が人と一緒にいて楽しいと思えるような温かい空間→動機が生まれる。

親の代がなくなって、お兄さん夫婦が頼りの患者、
なかなか外泊はできない。盆正月くらい。
家族との交流の大事な機会が「九の市」で-

・外泊させてもらったお礼をお兄さんに言う練習
SW:外泊の御礼になって言おうか?

P:ありがとう

SW:お兄さんたち忙しそうだから、まずそれだけ言おう。やってみる
最初から自分でやってみるって、みんな拍手だよ
どこが上手かをみんなみていて
じゃ、やってみて

P:おにいさん、ありがとうございました
(言いえて、拍手)

SW:今の鈴木栄子さんの上手だったところを聞きたいんですが
他のP:はっきりいえていてよかった。(拍手

他のP:明るい表情(拍手

他のP:相手の目を良く見て確認していたのがよかった(拍手

SW:すごくたくさんいいところがあった。
誰かとお話しするときに「相手の都合をかんがえること」はすごくだいじなこと
栄子さんは夕方のお兄さんが片付けているところ、3時半ちょっとすぎ、を選んで話しに行った。
それがまずすごいよね。
そのうえで、お兄さん、て呼びかけていったよね。
ばっちりじゃん。いままでになく。
8/15来週の火曜日、来週のSSTクラスでももう一回練習していく?
もういっかい復習してそれでお兄さんのところに行こうか。

②急性期の患者のSSTグループ

埼玉県三郷市 みさと協立病院

・デイケアで挨拶ができたことを報告している。
急性期:症状が不安定。生々しい人間関係の不安定を抱えている
    病前にできていたことを再構築していくことが中心。
    入院という状況の中で、限られた課題に焦点をあてて取り組む

最初はあいさつの練習から
(ここではDr.がリーダーをしている)

DR:ドアをあけて入ってきてあいさつ

P:こんにちは(拍手)

DR:皆さんの方にからだを向けて、声の大きさも適切だったと思います。

・病棟のデイルームでみんなの中で座る練習
それぞれの患者の力、具合をよく把握していることが前提。
リーダーとして、ストレスの具合を測りながらすすめていく。
改善の提案はたいてい職員から勧めてみて、ということになりがちだが
だから、コ・リーダーの存在は重要です(書記的な役割も)

・お父さんの誕生日の電話の練習


SW:障害のレベルがばらばらの方が参加されたほうがSSTにはいいのかなと
他の方の練習がつまらない?と思われるかもしれないが-

*んー、ある意味では「ふりつけ」という感覚がぬぐえないところはあるよなー

③デイケアでのSSTグループ

京都府立精神保健福祉総合センター
地域で生活する人が通う場所

・プレミーティング
医師:角谷慶子
基本的な会話をマスターするためのグループ。
その後、より良く生きるための、就職、友達作り、
もっとこうなりたいという希望に向けて、問題解決技能などを中心に応用グループ

・自分がしたくない話題は一歩前に出る
(みんなが横に並んで)

P:宗教とかいやですねぇ。年齢も。(みんなの中で一番遠くにってしまって-)恥ずかしい

SSTの成果をみることができるということで、
他の場面とSSTがマッチして進められる-

・宿題報告

このSSTに参加している人には、周囲との交流に難がある人が多いよう。
障害の説明、理解を得ることは難しい。

・人に自分の病気のことを適切に伝える練習
(スタッフの手本)
まず、この、そういわれたらショック、ということを言って、ただ、自分自身は変わっていない、病気のせいでこうなっているだけだから-、この4つかな。いえたら取ってもよかったね。

・もう一度チャレンジする。
・重要な言葉はメモする
*「セリフをおぼえる」というようなレベルまで、ちゃんとかいている感じだ。

(ビデオ終わり)

●ウォーミングアップ練習

これからみなさんにやっていただきたいウォーミングアップ。
それぞれが「みんなに是非紹介したい場所」を思い浮かべて、
北から順に並んでいきましょう
北から発表していく
(これが終わって授業が終り)