2011年11月24日木曜日

家族療法‐9 レポートについて/心理教育

252 石井千賀子

まくら的に、グリーフワークの話から
(先生はグリーフワークに関するカウンセリングをすることが多いらしい)
自分を客観的に見ることと他者を援助することの関係の話

・フィードバック返却&質問へのこたえ

(学生)セラピストの方が際を指摘するのではなくて、
クライエント自身で見つけられるように力をひきだすのがポイントですね?
と書かれていたかたがいましたが

そうですね

(学生)そのための聞き方がポイントですか?と

そうですね。

(学生)情報が少ないと、差異のポイントが見えてきにくい、
ということもいくつか頂きましたが

そうですね。先週はモデルにしている家族から何とか考え出すということでしたが
実際には「仮説」から検証していくというプロセスをたどります。
先週出た事例でしたら、二人の子供がいるとなった時に、
その二人の子供の間に違いが無いか?という視点をもって話を聞いていくということ

(学生)この「例外探し」は解決志向セラピーにおけるものと一緒ですか?

そうですね。同じです。いずれにしても、本人がもっている資源を使っていこうということ
福祉で言うエンパワメントも関連するところですね。

(学生)そもそも長男ばかり甘やかすということが間違いじゃないか?

これもいくつかありましたが、カウンセリングにおける「べき論」のあり方ですよね。
これが治療にたいして有効なのかどうか。
これは流派のによる違いというものもありますが。
別の言い方をすると「権威的」ということですね。
最近ではあまりこのようなやり方は取られなくなっています。
ポストモダンとかナラティブという文脈で語られる事ですが。

今日は前回のプリントの後半に入りますが、
その前に、レポートのアウトラインを。
というのも、レポートでやっていただきたいこととこのクラスの流れは平行していますので。
*プリント配布
「家族療法:「家族と私」レポート」

「家族と私」というタイトルでレポートを書いていただくのですが
何らかの理由で自分の家族はちょっと、という方は相談に乗りますので言ってください。

目的としては
クラスで学んだ見方で一つの家族を見てみるという事と
自分の家族について見直してみる、ということですね。
(授業の感想でも自分の家族のことについ頭がいって-、と書かれていることも多いですが)

ちょっとしんどい作業かもしれませんが。

これからアウトラインを読んでいきますが

では、まず目的を読んでもらえますか

・目的:
1.家族システム理論に基づいて、あなた自身の家族関係を理解し、
これからの人間関係に自分の秘めた強さを活用して、自分の人生プランを立てる。

2.自分自身の家族関係を客観的に見る作業をしておくことにより、
将来援助者として、自分の家族のものさしに偏らずに、適切な関わりが出来る。

・アウトライン
1.家族の説明
A. 家族(3世代)の特徴と、拡大家族や地域社会の価値観・文科等の影響など
B. 家族ライフ・サイクルの現在の段階(前段階から移行点の課題)

こういうことを書くには誰かに聞くことも必要かもしれませんね。聞きにくいかもしれませんから無理はせずとも、ひとつの機会として

2.家族システムの理解
A.主な二者関係(同盟)、三角関係(不安定な二者関係が、第三者を取り込む)

まずジェノグラムを見ていくと、非常に強い2者関係というところが出てくる。
そして、強い二者関係から第三番者を引き込むことを三角関係、と言いますね。
つまり、そのことで直接的な課題を見なくても済むようになるから。

例えば、夫婦間に経済問題などがあって穏やかじゃなくなると、
その時に子供がいて、それが2歳の子であっても、
その問題を察しておもちゃ箱をひっくり返す(そして助け舟を出す)
というようなことが起こる。これは「取り込まれている」という言い方をしますが
そういう意味で、おもちゃ箱をひっくり返す子を問題児と見ることが多いですが、
周囲との関係で見ると、そことの関係から起こっている行動かもしれない。

B. 家族の役割(呼び名、口癖などから意識的、無意識的に割り振られた役割)

家族がそれぞれどんな役割をとっているのか。父、母、子以外の役割について。
問題解決をする役割なのか、怒られるといういことでみんなを助けているのか。
ということで呼び名一つを取っても、その家族の中の役割がわかることがある。
たとえばきょうだいの上の子を「おにいちゃん」と呼ぶ呼び方による影響。
あるいはその人に対する形容詞。「にぎやかな」とか「口うるさい」とか
また、そのようなことが「誰から」言われているのか(ジェノグラムでは<by>と)
皆が読んでいるのか、誰か特定の人がそう呼んでいるのか。

C. ストレスとなりうる出来事への家族員の対応の仕方を、
コミュニケーション・パターンからみる

例えば、受験の失敗とか大きな病気とか。
何事もなかったようにするのか、大騒ぎする人がいるのか
またそれをサポートする人がいるのか、反対する人がいるのか。
こんなことがあったなということが思い浮かんだら12行書いてみてください。

D. 意見の違いがあるときの雰囲気、その時の周囲の反応。

あるいは違いがあること自体が許容されないのか。
まず雰囲気がどうかという事と、その時の反応(たしなめるのか認めるのか)
ささいなことでも一つ二つ事例が思いだせると書きやすいかなと思います。

E. 世代間伝承されているもの(役割、関係のとり方、価値観等)

良い悪いにかかわらず。
たとえば周囲に知られたら恥ずかしいことは話さない、というようなこと
私は92歳の叔父から話を聞いていて、
死に関連して、恥ずかしいことはヨソへ言わない、話さないということが分かって-
以外と気づかないうちに、
「それはしないことだ」「これは大事なことだ」ということが受けつがれている場合がある。
まず、それに気づくことが大事です。
関係のあり方、価値観、役割の取り方。

例えば、「不機嫌」という言葉の使い方
私の場合だとまず父が帰ってきたときにその機嫌をみて、ということがあったのですが、
それがいまの自分の世代においてはどうなっているのか、ということを見てみると
気づきがあるかもしれません。

ここまでのところは、私も大学院の時にレポートで書かされましたが、
これから先のことは、そのしんどかったことを、明るい方向に是非つかっていただきたい。

3.リフレイミング
フレイムを変えるということで、見方を変えてみるということ。

A. 家族の中で問題とみなされていたこと(家族員の言動、性格、対処法)のうち、
あなたの見方が変わったものは何か。

ここの書き方はちょっと意図的ですが(変わったということを前提に書いていますが)
非常にナラティブ的な聞き方をさせていただいているのですが、
どんな小さなことでも書いてみてください。

*物語を「書きかえる」

B. どのようなプロセスがあって、それはもはや問題ではなくなったのか
(例:問題を家族システムの発達過程と見る
   円環的な関係の一部とみなす
   非合理的な思い込みについて
   今までと異なった意味づけをする)

家族システムは変わっていく。
最初はお父さんは威厳があるものだという事があったとしても
それはその先変わる可能性がある。
受けついだものをそのままやらなくてはいけない訳じゃない。とか。

4.家族の関係の、行動計画

つまり、いろいろ気づいたことを少し形にしてみましょう、と。

A. 今後予想される家族関係
 1.家族ライフサイクルを進む時、原家族との関係において
 2.新たな家族関係、その他の人間関係において

この辺は予想なので予想の範囲で書いてください

B. その時に備えて今考える行動計画
 1.自分が秘めている強さを活用した、具体的な行動計画(目標設定を応用して)

先週「差異」についてやってきましたが、
それはその人の持っている「強さ」を見ようということでした。
それを自分の中にも見てみましょう、ということ。
その時にどんな、日常レベルであっても、
大切にしてやっていきたいということがあるのか。

ここでいう「目標設定」というのは-
クラスでは、クライエントの人に、いま困っていることがあるならば
まず、誰との関係でどう変わりたいのか、ということを明確にしましょう、という
流れで出てきましたが、おおきなこと抽象的な事ではなくて具体的に
今出来ていることの一歩上を目指すということを目標にしようという意味です。
「人に優しくする」というようなことだと非常に抽象的ですよね。


*あー、SSTのクラスでも感じたことだが、
こういうのって目標設定が出来た時点で半分問題は解決しているんだよな。
というか、解決というゴールへ向かう(カウンセラー側から見た)プロセスの一環。

それがスムーズに出来れば何の問題も無いんだろうけれど、
実際にはうまく目標を設定できず、促されて、修正されて
なんとか設定できました、とかは起こりそうなことだ。

具体的な目標、たとえば、
「家族と一日のはじめに顔を合わせた時に挨拶をする」とか目標を設定したとして
それは達成できても、結局漠然としたところの
たとえば「幸せになりたい」とか「人に優しくなりたい」とかは
もやもやとしたまま心にあり続けるというようなことが起こるんじゃないか。
そりゃ解決ということを目指した場合のスモールステップというのはあるんだろうけど。
でも、何に向かってのスモールステップかってのが、時として、カウンセラーの期待にこたえるための行動になりかねないとも思う。

でもあれだな、こう考えていくと、
「入り口と出口の違い」という意味での
自己啓発、宗教の問題と同じことが起こってくるよな。
「あれ、俺本当はなにがほしかったんだっけ」的な。
でも、途中途中では達成感による満足とかがあったりもして厄介だったり。


○レポートではこのアウトラインを全部かく、ということ。

レポートは必ず返却します。
また、頂いた内容については極力忘れるようにします。
これは援助者としてのプライバシーの取り扱いと同様です。
封筒に入れてくださいと言うようなことがあれば、それはお答えしますので言ってください。


じゃあ、プリントの方に入っていきましょう。
プリント:家族療法の概念を統合的に取り入れた援助をめざして

先週やったのは
・まず、誰が解決に歩みだすのか、ということを明確にして
・目標を具体的に決める
・その次に、じゃあ今の段階でどんな差異があるのかというのを見つける
ここまでやりましたね。

その上で、コミュニケーションの上での心理教育というところです。
差異は見出せたけど、問題の解決にまでは至らなかった、という時に
新たなコミュニケーションを伝える、本人ができるようにする、
ということでの「心理教育」です。
「スキルを身につけることにより、具体的な問題解決へ歩みだす」

じゃあ、例えば、
人と意見が違う人に対して、どんな風に手伝いをしたいと思いますか?

…(沈黙)

じゃあ、資料「よい相談相手になるために」をだして頂けますか。
P141
「対人関係スキルを学ぶ」

・自己表現

まず、自己表現のスキルをお手伝いしましょう、ということですね。
自己表現というとどんなことがあります?

例えば表現に対して3つに分けてみる取ると
・引っ込み思案
・攻撃的
・自己主張をする
引っ込み思案で、後々怒りを溜め込んでしまう、という人がいたとすると、
まずそれをどう自己表現するか、というスキルをお伝えする、と。

他にはどんなことがありますか?
表現の仕方だけでは解決しない、という場合には-
カウンセラーの勉強をする際にまず身につけるのは
・聞き方
ですね。
つまり、聞き方で問題解決することも出来る、という事です。
クライエントの人が、聞き方がうまくいかなかったがために
「なに言っているの!そんなこと言うのは止めなさい」というような反応が出てきて
問題が起こっていた、というような場合。

自己表現のスキルとしてはどうですか?
・アサーション
・私メッセージ
・アサーション

聞き方のほうは
・傾聴(能動的聞き方という場合もありますね、英語のActive Listeningから)

じゃあ、来週は
自分も大切、相手も大切というところでのコミュニケーションということについて
やっていきましょう。

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