2010年9月22日水曜日

学習心理学-1「学習とは何か」

4限 251

*授業始まる前から先生は教室に。

はい、こんにちは
おそらく1/3くらいの方は前期に認知心理学を取っているんじゃないかと思いますが
*マイク調整

その方たちにはお久しぶりです。またはじめまして。

今日は初回なので早めに済ませようかと考えています。
(学生)「本当ですか?」

日本心理学会の学会が大阪でありまして、時間オーバーでいたく反省を。
だから今日ははやく。

私の授業では冒頭10分に何かやってもらいます。
今日は「これまでしてきた学習」(レスポンスシートが配られる。)

「これまでにどのような学習をしてきましたか?簡単に記して下さい」
(*寝方から生き方まで)

えー、では今日のレジュメを配布します。
1.授業の目的 2.授業の進め方 3.評価の仕方

では、はじめましょう。改めてみなさんこんにちは

学習心理学という事で。みなさんは一応シラバスをご覧になっているかと思います。

「学習」という観点から心理学的現象について考察すると同時に「客観的な事実による裏づけ」がどのように得られるか、どのように「事実」を解釈するかについても見つけることを目標とする。

学習心理学は、数ある心理学の中でも「客観性」を厳密に考えます。
行動心理学的な視点。

気になる評価について先に説明を。
Quizは前回の復習を兼ねたものを書いてもらいます。これで出欠確認も含む。
身体だけ来ていてもQuizを出してなければ来ていないと同然。
配り終わるまでに来なければ欠席。
Quizのパフォーマンスは評価の重要な要素。

期末課題。
最終回に教場でレポート作成。23週前に予めテーマは示します。

スケジュール確認。
・生得的行動と学習
・条件付け
・認知的要因
・動機付け

そうしたことを踏まえて、臨床の人は興味あるでしょう、
行動療法、を見ていきます。これを理解するための前提を勉強していきます。

112日この日が大課題の日、ということです。
お正月の期間を使って入念に準備をしてください。

このやり方から分かるとおり、出席重視です。日々の積み重ね。なるべく休まず。
私語は厳禁

やむを得ず欠席の場合は、自助努力でキャッチアップをする。
理由のある欠席の場合はQuizはその回の平均点がつきます。
事後でもよいので届けること。

・耳からの情報、に注意を払う。
この授業では教科書は使いません。毎回プリントを配ります。コピーしてください。

さて、今更ながらですが、担当のUedaです。
認知心理学も持っています。こちらのほうが専門です。
カテゴリー学習が本当の専門です。
ちょこっとみてみましょう。(パワポ)

さて、ここまでが事務的な話です。
参考書の指定は特にないです。図書館にリザーブブックはあります。
参考文献、読書案内は行います。決してプリントだけに満足せず勉強してください。

認知心理学をとっていなくて今回はじめてのかた、大丈夫ですか?
思いついたらその段階で聞いてください。

今日の話の内容。さくっと終わらせますが、
何を話すか。

「学習」ということを。
原理的なところから話を始めるのがすきなので。

*いろんな心理学

漢字二字熟語+心理学
学習心理学
認知心理学
臨床心理学

言語、思考、記憶、感覚、知覚、記憶、数理、実験、動物、感情、性格・人格、発達社会、環境、児童青年老年、教育、交通、産業、経営、犯罪、強制、神経、健康、医療、・・・、看護、・・・

数理心理学 数学モデルでの記述(私もそうです)確率的な、数学的な性質を考えることで心について解明しようと。

動物心理学は学習心理学と密接に関係しています。
行動から心理をあぶりだす。

正式に部門として認められている○○心理学、日本で20、米国で50くらいあります。

この授業では「学習」の観点から心理を見ると。
さて、その学習という観点、
なぜそういう考え方が?(今日のメインテーマ)
原理的な話、歴史を振り返る

心理学の流れ
・心理学の誕生と意識の研究
・行動と学習の研究

みなさん、おおむね2年生以上ですよね?
これまでに、何科目か勉強してきましたね。心理学が出来てから何年くらい経っているんでしたっけ?
昔から心の不思議を考える人は沢山います。心理学、となったのは近代になってから。

アリストテレスは紀元前330年くらいのひとですが、最初に心について述べた人です。
東洋でも唯識論
キリスト教でもアウグスティヌスとかですね、神学をやっていた人も心について触れています。
それが心理学として独立したのは ヴントWundt からです。
哲学などでも「なぜものが赤く見えるか」などは考えられてきました。
これが実験という手法から解き明かそうということで「心理学」となった。

1879年ヴントはライプチッヒ大学に心理学実験室を開設。
客観的に確かめたい、ここから実験、がはじまる。

人間性についての深い洞察ということと、心理学の本質は異なる。
そのような洞察は「個別的」なもの
だれでも身につけられるものではない。運がよければ分かるが。

何か心に関して立派なことを述べてみましょうか、
なにか、立派そうなことを語ってください。
「心はきれい」

たとえば作家の人が言うような「人間とはしょせん○○だ」と
それは心理かもしれないが、天才にしかそこには行けないのか?

「心理学」においては「手順を踏めばだれでもそこへいける」という所からの心への道。

こころについて知りたいのならなにも心理学をやらなくても良いのですからね。
経済学を修めてもお金持ちになるとは限らないということと同意です。

ですが心理学として体系化された学問をすることで、体系的な見方を出来るようになるわけです。

このヴントでは、なにを実験した?
・「意識の流れ」が主な研究対象

いま皆さんが私の声を聴き、文字にしている、これも心の働きな訳です。
光、音、を感じられるのも心の働きです。

色々なその働きの中でヴントは「意識の流れ」に注目しました。

今皆さん、眠くて仕方のない人、明日の休みに気をとられている人、
いま、その瞬間の流れをスナップショットのようにしたもの、
これがヴントの考えた意識の流れ。

・「記憶」「思考」といった心の動きは研究不可能だと思われていた。
 何を感じてる、何を考えている、というところから心に迫ろうとした。

スナップショットのように、と今言いました。

○ヴントの心理学
・要素主義(分解と組み合わせで説明できる)
哲学で言うところの「原子論」にあたる。
内観法の採用
これをもって生理学的心理学とよんだ。

内観法、心理療法の一種でありますが、それとは全く違います。
ここでいう内観、とはIntrospectionの訳語です。

冷静に考えて、いま感じていることを言葉にする。
虚心坦懐に。いま、何を感じているか、太ももの裏に、どのくらいの圧力を感じているか、
といったことを、語ってもらう、これが内観です。
そういうことによって意識のありようを追求。

同時に、簡単に見えるもの聞こえるもの、そうでないもの。
内観を得るまでの時間もつかって、感じられた結果の、複雑さをみようとした

さぁ、心に起こっていることを語ってもらいます。
生徒に振る
「いま何を感じていますか?これがどう見えていますか」
ということをうやってもらうわけです。
或いは(教壇をたたいた音)どちらが高く聞こえますか、ということをやってもらう。

1879年に実験室をつくりそういうこと。
当時はだからライプチヒが聖地なわけです。

京都大学の松本亦太郎、アメリカのウィッチナーも皆ここに来て学んでいった。

それはさておき。ヴント風心理学、

・要素主義
しかしメッキがはがれてくる。つまり心は分解できるのか?
味、化学的には分解できるものです。
実際に味を感じる舌、も56種類の味を感じる細胞に分かれています。

ですから、
今一番食べてみたいものは何?(学生)「おすし」
その味を合成すると考えたら
酸味と塩味と―、とうまく合成すると、その味が原理的には出来上がる。

心もそれと同じか?
どうも無理っぽいぞ?と。

感情の研究、どんな科目でやるのかな?
これも要素主義な訳です。
ポジティブとネガティブ
覚醒水準の高い低い、
気持ちいい悪い
この組み合わせで説明できるとする、これを基本情動論といいます。

この要素主義+内観への疑念から

無心像思考の存在 が出てくる。
口にすることは出来なくとも考えている。
不細工な人と美人はどこで見分けるべきか?
(学生)「・・・」
こうして口には出せなくとも、残念な人とそうでない人はすぐに分かるわけです。

印象派とバルビゾン派のちがい、
違いが分かってもそれをどうとは言い得ない。

・実用主義の台頭
上とは別の文脈ですが、プラグマティズム
臨床心理学はその意味で実用の塊なのですが。

語ってもらうだけで満足してよいのでしょうか、とか。
そこで出てきたのが、1910年代です。行動主義。

行動と学習、切っても切り離せないと思ってください
「内観心理学」の行き詰まり
・曖昧さ
語ってもらってこころなどわからないのだ
・研究法の不備
語ってもらって満足、では駄目だ。

じゃー、意識というものを相手にするのはやめてしまいましょう、と。
20世紀に入ってすぐ、パブロフ
新しい脳の研究、当時のヴント風心理学を口を極めてののしっていた。
では何に注目する?
目に見えるもの
「行動主義宣言」ワトソン 1913
・意識よりも行動
5回うなずいたか、3回うなずいたかは、見てわかる、記録できる。
例えば、
皆さんのやる気、ということは見ていても分かりませんが、
注目をどの程度しているか、は測れる。
しかし、みていることととやる気の相関関係は問題。
だが、そこをそうしてしまえば、白黒つく。それをもって心理学とすると。

ひとたび心の追求に大事なのは行動、としてしまうと、問題として考えるのは
如何に行動をデータにするか、ということ。(現代にも通じる問題)
方法的な問題。

そして、行動を解き明かす仕組み、行動の秘密、が目指す地点となる。
なぜ、やましいことがあると人は目をそらしてしまうのか。
 どうしてですか?(学生)「見抜かれたような気になるから」
しかしこれだと内観と同じですね。

そもそもやましさ、これは視線をそらす行動にあらわれる?
視線そらし行動、それはどうやって得られる?
犬でもやましい時に目をそらすか?飼い主から目をそらすか?
ちょっとわからないですね。

そうした行動がどうやってできてくるか
ここで「学習」という言葉が出てくる。
それはなぜか。
私たちの行動の多くは学習で得られる。
当たり前のように、多くの行動はなんらかの学習の成果なんです。

今日のお題で書いてもらったのも、決して「勉強」のことではないんです。

ですから行動に注目する。
行動の多くは、ある文化圏、育てられ方によって身につく。
行動獲得の仕組みが心理学にとって重要ということになる。。
それが学習心理学ということ。

ということで、意識を相手にせず、
分かりやすく、客観的、データに出来る「行動」に注目しましょう、となった。

そうなると、「心」という必要すらない。
重要なのは行動。
やましい気持ち、ではなく、視線そらし行動、と。
あるいは日常的な言葉と反対のことを言うと
「サボりを学習する」というのも普通に出来る言い方ですね。
或いは
「忘れることの学習」とか。
これは今でもそういうことです。
(ハイキング行動、のはなし)

行動的な立場の心理学は、心理とは言わずに、
おもて、に現れた行動を見る、と。

さて1913年、行動主義宣言。
心理学は行動の学問になった。

図書館に行って、行動研究法、などのほん沢山あります。
1970年代半ばまでに出ている心理学の教科書は全て「行動の学問」という観点から。

ですから例えば、
大阪大学、心理学科ではなく行動科学科、千葉大もそう。
やっているのは心理の先生なのですが、学科名称にのこっている。
それほど行動の追及はだいじだった。

それの最右翼に走るとどうなるか。
意識なんていかがわしいものです。
心理とか、気持ちとか、そういうことをいうとけしからん、と。
そんないかがわしいもの相手にするな。
そういう姿勢がアメリカでは強くなってくる。
ドイツなどではこなれている分、行動命、のひとへの冷ややかな視線も会ったわけですが。

行動が重要、行動の獲得が重要、となると
動物のほうがはるかに研究しやすいわけです。
(人間を動物の延長と捉えた場合には)

人間を使うよりねずみのほうがはるかに新しい行動を学習させやすい。
例えば皆さんなんかを研究の素材と考えると、人生の垢にまみれているわけです。
しかし人の赤ちゃんは、そうそう扱えないわけです。
そこで動物と。
ですので、一時期の心理学は、ねずみの心理学、になったわけです。

どれくらい管理するか、
標準体重の65%に落として実験する、とか
この血統のねずみ、とかですね。

それを人でやれるのは「北・・・」くらいでしょうが
しかし、
特に臨床的な観点からすると
ちょっとちがうんじゃ?と。

もう人を使うことすら邪道ということになると、本末転倒だと。

1960年代以降は反省がすすみ、
認知心理学のような人間の頭、心の中を解明するアプローチが出てきたわけです。
・こころの動きは「情報処理」

さて、
私が皆さんくらいの頃には、ねずみの心理学を馬鹿にして認知心理学をはじめたわけです。
しかしこれはたんに時代遅れ、ではない。
なぜか。

○現代の心理学における「学習」
・方法論の踏襲

小学校の教室などで仲間はずれがおこるのか?
それを素早く察知することは大切です。
どういう行動からそれが知れるか
行動主義的な観点は有効。
一見いじめの兆候とは見えない行動から、そのいじめを見抜くことが大切になってくる。

また最近では脳の働きを直接観察する方法も発達してる。
MRIなど
あれも、何かの行動データをとって、それに対応する脳のデータをとって始めて意味が出てくる。
何もない状態で脳の血流をみても意味がない。
今のブレインイメージングとは、脳の血流の流れを分かりやすく見せている。
決まった場所で、決まった変化、
物を考えているときには前頭葉に血が流れる、とか。
長期的な記憶は側頭葉の内側、ということ
対応する行動データがないとお話にならない。
学習心理学的な実験は欠かせない。
思想はともかう、技術技法は息づいている。

・行動主義的ではない「学習」の研究
情報処理的・認知科学的に「学習」を研究

・実用的視点
行動変容の技法研究
臨床分野への応用

(先週の京王線の踏切事故の話)
サトウマサヤ先生は、応用行動分析(国際行動分析学会の会長も)の
大学院で勉強したい人は佐藤先生の行動理論の正体、などは必須。

いわゆる問題行動、行動の分析、行動変容の技術、現在でも一般に
認知心理学などよりはるかに実用性の高い学問として研究されている。

後の回で、ちゃんと説明しますが、
行動療法、認知行動療法、行動の習性の仕方、
学習心理学の目標とするところな訳です。

今日の話、
意識、を客観視しよう
行動に着目、
行動の獲得、変化の仕方つまり「学習」
人のこころを行動的な観点から見るときに重要なわけです。

来週以降は、これらを踏まえて行動の変容を

来週は
「うまれつき」「適応」という観点から。
行動と学習をみていきたいと思います。